あんちょび

愛してください

褒められたい

日夜仕事中に薄暗い工場で指先を怪我したりしながらも果敢に仕事に励む俺をもっと上司は褒めるべきだ。評価して欲しいとかそういう烏滸がましいことではなく、ひと言でも良いから褒めてくれという話である。俺は褒められたら伸びるタイプであるが、一定期間褒められないと全てのやる気を失い、触れるもの全てを傷つけるジャックナイフの様な性格になってまう。最近全然褒められた記憶がない。もっと俺を褒めろよ。絶え間なく。

 

思い返せば幼少期はよく褒められたものである。当時は何事もすぐにコツを掴み、淡々と物事をこなす俺の聡明さ迸る姿を見た両親と祖父母は目を輝かせて「神童だ…」と呟き、お小遣いを湯水の如く俺に与えていた。将来は弁護士か、医者か…と祖父母の期待値がみるみる高まり、丁度期待値が大気圏を越えるぐらい高まっていたところ、高校に進学して軽音楽部に入部したことを皮切りに夜遅くまでライブハウスに入り浸り、ライブハウスの大人に言いくるめられて月に何度もライブをさせられたり、先輩にお腹いっぱいの状態で家系ラーメンを無理矢理食わされ挙句、冬の川へ突き落とされて川辺をゲロまみれにしたりしていたら定期テストの順位が360人中356位というチンカスの様な順位を叩き出し、教師達から向けられる出し忘れた生ゴミを見るような視線を全身に浴びながら留年予備軍の地位へと成り果てたタイミングで、両親と祖父母の期待で大きく膨らんだ胸は水風呂に浸かったちんちんのように縮こまり、大気圏を越えんばかりに高まっていた期待値は、富士急ハイランドのジェットコースターばりに急降下し、土に埋まった。もうかれこれ7年ぐらい埋まっている。埋まりすぎやろ。わしゃセミか。セミの幼虫か。

 

高2の冬。この調子で行くと留年してしまうし、仮に留年してしまったら、歳下達が敬語を使って良いのか悪いのかわからないような微妙な距離感で接してくる感じとかに耐えられなくなり、ものの1週間で自主退学(セミだけにww)の道を選ぶことは目に見えていたので「このままじゃまずい…俺は大学にいくんや…」と哀愁のあるセリフを吐いて一念発起し、勉学に向き合っていたら普通に留年を回避し、三者面談で担任から「お前には無理ww」と嘲笑されていた大学の合格水準を高3の夏に超えたことで、さらに上のレベルの大学も射程圏内に入った。さながらビリギャルの有村架純と同じ状況である。

 

しかし、俺はビリではあるがギャルではないし、なんなら有村架純でもないので、そう簡単に上手くいくはずがない。事件は高3の秋に起きた。当時、息抜き程度にチラッと見ていたアニメの「けいおん」にハマってしまったが故、完全に勉強のやる気が削がれ、勉強時間と「けいおん」を見る時間が反比例し、結果的に第一志望の大学に7回落ちた。俺がギャルでなおかつ有村架純だったらこんなことにはなっていなかっただろう。ビリギャルの様な起死回生の成功への道は轟音をたてて崩壊し、残ったのは受験失敗大学7回落ちキモオタ街道だけであった。家には「不合格」が禍々しく印字されたハガキが7枚届いた。7枚てお前、集めたら神龍(シェンロン)が出てくる数やろが。ふざけるなよ。神龍呼んだろか。まあ、7枚のハガキを並べて「いでよ!!!神龍!!!!」と叫んだところで神龍は出てこないし、仮に出てきたとしても不合格通知から出てきた神龍などロクなものではない。合格にしてくれと頼んでも、どうせ7枚の不合格通知の「不」の印字を修正テープで消して「はいw合格ww」とかおもろないことを言ってくるに違いない。これだからシェンカス(神龍のカス)は…。俺の不合格を取り消してくれる神龍など存在しないのだ。ただそこにあるのは綺麗に並べられた7枚の不合格通知と7回不合格になった愚鈍な受験生の悲哀に満ちた背中だけである。結局、夏頃に合格水準を超えていた大学だけ合格していたため、そこに入学することで事なきを得たわけだが…

 

書くの飽きてきた。もうええわ。
全部、お前らのせいや