あんちょび

愛してください

こんなはずじゃ…

俺は大学で経営学を学び、アルバイトでPCの教育補助などを行なっていたことから確実に社会に出たら観葉植物で彩られた涼しいオフィスで華麗なブラインドタッチを披露してビジネス用語をこれ見よがしに使い、昼休みは仲の良い同僚と小洒落たランチを食べたりするものだとばかり思っていたのだが、あろうことか今の職場は金属音やブザーの音が鳴り止まない薄暗い工場で職人気質のパワハラチンカス上司に怒鳴られながら、大きめのハンマーをスマブラデデデ大王ぐらい振り回して手首を痛めたりしている。

 

人生はあらゆる選択肢の連続で出来ているが、今の俺は全ての選択肢を間違えたと言わざるを得ない。ここにはブラインドタッチを披露するキーボードもオフィスを彩る観葉植物もない。ビジネス用語を発する機会などなく、浅黒く小汚いおっさん達が下ネタと汚い関西弁を発している。昼飯は同僚と小洒落たランチを嗜むことなどなく、毎朝家から握ってきた核爆弾ぐらいデカイおにぎり2つで済ましている。いい加減にしろよ。食堂で爆発させて全員被爆させたろか。そもそもテレビと机しか置いてない部屋を食堂とは言わんやろ。カスが。唯一、弁当が売っていたので入社当初に試しに買って食べてみたら生ゴミみたいなクオリティだったのでそれ以来買っていない。味が薄すぎる。お湯で2回洗ったんか。左手で作ったんか。材料は火曜の燃えるゴミの日に捨ててあった生ゴミをふんだんに使っとるんか。ふざけるな。金を返せ。

 

就活で安定と将来性を重視した結果、理想の社会人像と真逆の社会人へとなりつつあるこの現実はあまりにも酷である。就職活動を通してこの会社に決めた2年前の自分を助走つけて殴りたい。そもそも就職活動などで会社の全てを知ろうなど無理な話だ。当時は魅力的に見えていたとしてもこのザマである。何事も遠くから見れば良く見えるものなのかもしれない。あの工場排水や汚水にまみれた淀川だって、夕方の阪急京都線の車窓から見れば涙が出そうなぐらい輝いて見えるが、いざ淀川の河川敷まで近づいて見てみると、この世の全ての汚水がここに集まっているとしか思えないぐらい汚いドブ川である。これと同様に、会社も遠いところから見れば魅力的に見えるが、近づいて見ればどうしようもないドブ川に見えるのである。はやくドブ川から抜け出したい。助けてくれ。俺を救ってくれ。こんなはずじゃ…なかった…