あんちょび

愛してください

8億くれ

つい先日まで定時で帰る生活をしていたというのに、突然毎日4時間の残業という壮絶なハンドルの切り方をされたため、精神も肉体もこのワイルドスピード並のハンドル操作に耐えきれず悲鳴を上げている。残業後に乗り込んだバスには、同じく残業を経て家路につくサラリーマンの姿があり、全員漏れなく下を向いていた。都会のネオンサインはひたすら床を見続ける彼らを容赦なく照らす。ロックンロールの音が鳴り止まないライブハウスで青春を謳歌する大学時代を過ごしていた私ことあんちょびであったが、今は金属音や電動工具の音が鳴り止まない工場で馬車馬の様に働いている。突然の残業で職場に火をつけて叫び散らかしながら何もかもめちゃくちゃにしたろかと言わんばかりの疲労を抱えているが、不思議なことに人間という生き物は一月もすれば大概のことには慣れてしまう生き物である。

 

幼少期、日曜の朝に見ていた百獣戦隊ガオレンジャーが年末で終わってしまい、年明けから忍風戦隊ハリケンジャーが始まった時「なんやこいつら!俺はガオレンジャーが好きなんや!お前らなんぞ認めへんぞ!てか誰やねん!きっしょ(笑)」と息巻いていたが、ハリケンジャーが終わる頃には、ガオレンジャーのことはもうどうでも良くなっており、ハリケンジャーとの別れが惜しくなってしまっていたりする。これと同様に、「つい先週まで定時退社三昧だったのに突然毎日4時間残業とかふざけるなよ!!!」と思っていたとしても、ものの一月もすれば残業三昧の日々に対して身体が慣れ、愛着も湧き、「なんで定時やねん!!!もっと残業させろ!!!」という気持ちになるというのが、幸か不幸か、人間の慣れるという習性であり、性(さが)である。とはいえ、残業代が出ることによってめちゃくちゃ稼げるという点に関して言えば"最高"の2文字である。若いうちは大した給料を貰うことはできないので、残業という命の前借りをすることで得られる対価は大きい…

 

 


…と、ここまでの文章を先日書いて下書きに保存していたが、今残業を終えてこの下書きを見ても、残業に対してポジティブに書きすぎやろ!!という感情しか湧いてこない。良いことなど1つもない。家に帰らせろ。こっちは疲れとるんや。クソが。しょうもない。ほんまに。もう無理や。8億ぐらいもらわなやってられん。8億円寄越せ。8億円も渡さんクセに俺をこき使うなよ。謝ってくれ。誰が悪いとかそういうことじゃなくてとにかく謝ってくれ。地面に伏して頭(こうべ)を差し出せ。故に侘助

 

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卍解するぞ。気抜いてる間に卍解を。休憩中に談笑しているタイミングで急に卍解したろか。喫煙所を突然眩い光に包んだろか。ほら見ろ!この浮腫んだ足を!コンクリぐらい硬い安全靴を履いて毎日20,000歩ぐらい工場内を歩きまわっているせいでボロボロやないか!いい加減にしてくれ!ふわっふわの中敷きをもってこい!足の裏を包み込むふわっふわの中敷きを!!!頼むから!!なんでこんな思いせなあかんねや!!!

 

 

 

 

 

全部…お前らのせいや

 

 

 

 

 

 

 

 

卍解